研究概要 |
熱流体力学としてのカルマン渦列の複雑系と創発性を次のように明らかにした. (1)従来の流体力学の教えるところによれば,低レイノルズ数ではカルマン渦列は発生せず,さらに後流特性はレイノルズ数のみに依存し,流体種類にまったく依存しない.しかし後流に負浮力を与えれば,低レイノルズ数でもカルマン渦列が発生する創発現象が生じ,さらに発生したカルマン渦列の挙動は流体種類に依存する複雑系であった. (2)従来の流体力学の教えるところによれば,45≦Reでのみ後流にカルマン渦列が生じ,そのカルマン渦列は流体種類にまったく依存しない.ここにReはレイノルズ数である.しかし45≦Reの後流に正浮力を与えれば,カルマン渦列が崩壊消滅する創発現象が生じ,さらに崩壊消滅の仕方は流体種類に依存する複雑系であった.一方,45≦Reの後流に負浮力を与えれば,カルマン渦列の渦スケールは増大し,カルマン渦列が発達する創発現象が生じ,さらに発達の仕方は流体種類に依存する複雑系であった. (3)従来の流体力学の教えるところによれば,Re数の増大によって,後流のストローハル数は連続的に微増し,急激に変化することはない.しかし層流および乱流の後流に正浮力を与えれば,円柱のある表面温度でストローハル数が急激に減少する構造不安定の創発現象が生じた.この構造不安定は浮力後流の二重構造性に起因した. (4)従来の流体力学の教えるところによれば,後流で渦度が生成されたり,消滅しない.しかし正/負浮力後流では後流渦度の消滅/生成が生じる創発現象が生じた.この創発現象こそが種々の創発現象の主原因であることを明らかにした.
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