研究概要 |
本研究を通じて成果は以下の通りである. (1)多地域一般均衡モデルの定式化: 交通ネットワークによって結ばれた多数の地域から成る経済システムの一般均衡モデルを定式化した。このモデルでは世帯及び企業の立地と、財市場、労働市場、土地市場の均衡を内生化しており、空間的価格均衡を通じて地域間交易のパターンが決まる。このモデルは,生産における集積の経済と地域間輸送費の相互作用により経済システムの空間構造が形成されるメカニズムを記述することができる. (2)モデルのパラメータ推定: 東北地方のデータを用いて上で定式化したモデルのパラメータを推定し,適合度の検証を行った。そのため、東北地方を37の地域に分割し,各地域別に企業の生産活動や世帯の消費に関するデータを収集した.その際、データの制約などから、直接モデルのパラメータ推定が求められない場合には,キャリブレーションによりパラメータ値を決定した.推定したパラメータを入力して多地域一般均衡のシミュレーションを実行し,均衡解と実際のデータとの比較を行うという,ファイナルテストを行った.その結果,このモデルが経済活動の空間分布をよく説明することが示された。 (3)交通ネットワークの整備効果に関するシミュレーション分析: 多地域モデルを用いてシミュレーションを実行し、輸送費低下の効果、および地域間交通ネットワーク整備の効果を分析した.また世帯の効用変化に基づいて、交通整備の経済便益を評価した.まず一般的な傾向を調べるため、すべての財、すべての地域間の輸送費が一様に減少した場合、地域別人口分布と経済便益がいかなる変化するかを調べた.次に東北地方で計画されている高速道路の各路線が開通した場合、地域別人口分布や経済便益がどのように変化したかを比較検討した。主たる結論は、既存の大都市と小都市を結ぶリンクの整備は、大都市へのさらなる経済活動の集中をもたらすこと、そして小都市間を結ぶリンクの整備は空間構造の分散化と相対的に高い経済便益をもたらすことが示された。
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