研究概要 |
目的:この2年間の研究では,神経所見の加齢変化と脳血管性痴呆に関与する遺伝的素因の解明を目的に,高齢者健診受診者群と脳血管障害患者群の比較検討行った. 方法:1)鹿児島県K町の60歳以上の在宅高齢者検診を行い,神経所見等,痴呆スケール(MMSE)等をデーターベース化し,経年変化について検討した.2)脳血管性障害患者(CVD群)127名,K町高齢者健診受診者294名について,アンギオテンシン変換酵素遺伝子多型(II,ID,DD)、ミトコンドリア遺伝子多型5178C/Aの頻度を検討した. 結果:K町高齢者健診による縦断的検討:1)MMSEを2回以上測定した590名では,MMSE得点は年齢と共に低下し,経年的変化上でも年齢の上昇とともに年平均のMMSE得点低下の割合が有意に増大していた.2)心疾患羅患が非悪化群に有意に多くみられたが,両群とも心疾患に対する薬物治療を受けていた.腎疾患罹患が悪化群で多く見られた.3)MMSE得点差と摂取食品との関係では,天ぷらの摂取との有意な負の関係が示されたが,今後,摂取総カロリーとの関係など栄養学的解析が必要がある. CVD群における遺伝子多型の検討:1)CVD群ではmt5178Cが有意に高率であった(p<0.01),2)病型別の検討では,脳出血,脳血栓,脳塞栓のいずれの病型でもmt5178Cが高率であったが,病型間では有意差は認められなかった.3)mt5178Cを示す女性CVD群で総コレステロール,中性脂肪が高い傾向がみられた.4)ACE遺伝子型については,CVD群と対照群の間,CVD各病型間のいずれにおいても有意差を認めなかった. 結論:今回の研究により,痴呆スケールの縦断的変化とそれに関連する因子,脳血管障害の遺伝的素因をある程度解明することが出来た.尚,老化に関する遺伝的素因の共同研究および関連する神経疾患についての遺伝子解析を行い研究成果を報告した.
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