研究概要 |
パーキンソン病では罹病期間の長期化に伴ってL-DOPA反応性のwearing-off現象やdyskinesia,L-DOPA治療に抵抗性の症状(すくみ足,痴呆)などが出現し治療上の問題となる.それらの病態生理については多くの動物実験による知見があるが,ヒトパーキンソン病脳における検討はこれまでなされていない.本研究ではパーキンソン病の剖研脳(延べ総数13例)の生化学変化と生前の臨床記録を対比することでヒトパーキンソン病におけるに述べたような徴候の病態生理を明らかにすることを試みた.生化学的検索項目としてdopamine(DA)神経終末の指標となるtyrosine hydroxylase(TH)活性をはじめ,神経伝達物質のDA,norepinephrine(NE),GABA,glutamine酸(Glu),神経ペプチドのdynorphinを測定した.これらを尾状核,側座核,被殻,黒質,淡蒼球外節,視床下核,等で測定し,各症例の臨床病歴から抽出された臨床症状と対比,ヒトパーキンソン病における「dyskinesia」,「wearing-off現象」と線条体TH活性,脳アミノ酸,神経ペプチド,「すくみ足」,「痴呆」,と側座核DA,NE含有量,等の関連について検討した. 「すくみ足」,「痴呆」と側座核核の生化学的変化との関連については一定の傾向がなく,「dyskinesia」,「wiaring-off」との関連では被殻の中間部より尾側のTH活性の低下が顕著な症例にこれらの症状発現が見られた.パーキンソン病の運動症状合併症の発現要因として被殻DA神経終末の変性の進行が重要と考えられた。
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