研究概要 |
ラットを用いた肺循環測定の手技を会得し,運動トレーニングによる肺血管内皮細胞由来弛緩因子である一酸化窒素(endothelium derived relaxing factor/nitric oxide,EDRF/NO)がどのような影響を与えるかについて検討した.次のことが明らかになった. 1)平地運動トレーニングは,運動および低酸素による肺血管収縮を抑制し,肺血管においてより多くの血流量を確保するために貢献していることがわかった. 2)低酸素(3%02)肺換気時に生じるHPVは,運動トレーニングによって抑制した.L-NAME投与は,HPVを促進させたが,とくに運動トレーニング群でより顕著であった.運動トレーニング群は,血流量の大きな場合,L-NAME投与後肺動脈圧が有意に増大した. 3)摘出肺血管によるNEお上びPE収縮は,運動トレーニングにより低下した.トレーニングにより繰り返されるNE分泌が,血管作動性物質に対する脱感作が生じるものと思われる. 4)運動トレーニングによる血管反応の変化は,ずり応力の増加による血管弛緩物質の変化など,様々な要因が考えられる. 5)低酸素換気と肺血流量の増加による肺血管透過係数の上昇は,L-arginineにより抑制され,逆にL-NAMEにより促進した.平地運動トレーニング群および高地運動トレーニング群は,対照群に比較して明らかに肺血管透過係数が低下し,さらに高地トレーニング群の方が平地トレーニングより低下した. 6)EDRFがNOと同定(EDRF/NO)されて以来,NOが血管弛緩因子として注目されきた.血管系においては,内皮細胞の産生するNOが局在循環したり,血圧調節に関与することは広く知られている^<14)>.本研究おいて運動トレーニングにより安静,運動および低酸素曝露時に慢性的に産生が増大したEDRF/NOは,血管内皮に由来する放出であることが確認でき,持久的運動能力の向上に寄与していると思われる.
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