研究概要 |
本研究の主題は,第一には視覚情報受容特性の観点から,今後期待される自動車用HUDの問題点を明らかにし,改善解や最適デザインのガイドラインを示すことである.第二には,三次元的に配置する遠近二種類の視対象の認識に与える(跳躍的)眼球運動の存在であると問題を単純化すれば,自動車用HUDと言う例題を通じて,(跳躍的)眼球運動と輻輳,情報の認識という3者の関連を,輻輳応答の継時的過程における視覚情報受容と処理プロセス(輻輳の加減速のケースでどう視覚情報は処理されているかなど)を明らかにすることである. 研究の結果,以下の成果を得研究成果を,論文投稿13件(内投稿中1件を含む),口頭発表2件,その他の発表2件として発表した. (1) 前景視対象に相当する遠方像(実像)とハーフミラによる表示像(虚像)視標とを、コンピュータにより運転条件を模擬して短時間呈示制御できる実験システムを構築した. (2) 虚像と実像までの視距離の差、被験者の偏角移動量、各視標のパターン等を変化させ視標の誤知覚や認識正答率を実験評価した結果,誤知覚の発生メカニズムは輻嬢応答遅れに起因することが分かった. (3) 同時に行った眼球運動計測の実験データから,表示像の俯角設定によって生じる眼球の共同運動応答と視距離差によって生じる輻鞍応答とに深い関連があり,共同運動が輻輳応答を加速促進効果があることが分かった. (4) 現実の自動車では、HUDの微小俯角設定による意図的共同運動が、ドライバの誤認識低減に極めて効果的であることが分かった. (5) 輻輳応答の遅れによる眼球運動がサッカード運動と連携していることにより,サッカード抑制が誤知覚を防ぐことに関連する視覚情報処理モデルを提案した.
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