研究概要 |
津波時の避難行動に適用した谷口・今村(1998)のモデルを改良し,現地での行動調査結果のデータを基に,経路選択の際に人間の判断を導入した避難行動シミュレーションの開発を行った.まず,今回の現地調査は昼間10人・夜間7人の被験者についておこなった.結果については,調査表及びVTRの検証から各項目についての経路選択の要素とその頻度比率を求めた.次に,避難経路選択についての現地調査については,津波常襲地域の海水浴場において,観光客などの地理認知度の低い人々が津波に対する避難勧告に対して,どのような避難行動をとるのか調査を行った.ここでは,合計10名の披験者に,避難開始の合図とともに,各自に行動をとってもらった.まず,5名が指定された避難場所の高台に到達することができた.これは先頭の一人が事前に標識があることを知っていたため,直ちにそちらの方向へ移動し,その後4人がその後を追随した結果である.これにより,避難行動モデルは,単独行動ではなく群集行動の特性としての要素も取り入れなければならない.最終的には,従来の経路選択判断モデルである総合的判断基準を改良し,個人的な意志や認識を外生的に入力できるモデルへと改良を行った.この改良した避難シミュレーションを,対象地の仙台市若林区貞山堀より海側の全住民に適用した.まず,道路・交差点,避難場所,橋脚などを現するネットワークデータを作成した.ヒアリングが得られた世帯はその結果をそのまま入力することとし,それ以外の世帯はヒアリング調査結果の割合,および区役所からいただいた町名別世帯構成人員別統計のデータより仮定した.目指す避難場所を各世帯によって区別することにより,対象地域から離れた内陸の方への避難者も表現することが出来た.また,道路に住民が集中することにより,交通密度が大幅に増加し,予定していた経路とは異なる周辺の道路へ迂回する世帯が多く観察された.
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