研究概要 |
重油の変成機構として、水分の混入による重油―海水エマルジョンの形成,海水中塩分の凝集、揮発分の大気への揮発に着目した。ナホトカ号船首抜き取り重油および数地点で入手した漂流・漂着重油のムースの組成を測定した結果,Naが油層へ移行していることを明らかにした。そこで,国産C重油を用いて,海洋漂流中の油の変性実験を行った結果,油中に塩分が移行することにより重油―淡水エマルジョンよりも水泡が微細となり、安定な油―海水エマルジョンが生成されることを明らかにした。さらに,エマルジョンの形成により揮発性成分の拡散が抑制されることを示した。次に海洋漂流重油の揮発成分の揮散および溶出成分の溶出機構を移動現象論的にモデル化し,数学的な解析を行うことにより,実験結果および漂流漂着中に含まれていたナフタレンの挙動を表すことができた。最後に、漂流・漂着重油による環境影響として、海藻葉への取り込みおよび海浜植物葉への取り込みをモデル化するとともに、大気汚染を招いた重油中の揮発成分の植物への影響を調べるために,キョウチクトウ葉を用いたベンゼンの吸収実験を行った。その結果、ベンゼンは気孔をとおして細胞層に取り込まれ、約4時間程度でベンゼン濃度が最大となり,葉の溶解を招くことが明らかにした。
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