下水汚泥焼却灰およびそのカルシウム塩混合物を高温電気炉で溶融したときにおけるリン酸塩結晶の構造解析とリンの溶解性を調査した。 その結果、熱処理汚泥焼却灰のように凝集剤を添加していない汚泥由来の焼却灰溶融物では、カルシウム塩添加によりカルシウムとの結晶化が進んだ。リンの溶解性も全リン酸含量に対する2%クエン酸可溶のリン酸含量の比率(ク溶率)が5%前後から80%前後に増加した。 しかし、石灰・塩鉄を凝集剤として添加している汚泥由来の焼却灰溶融物では、元来のカルシウム含有率が25%と高かったため、結晶性の度合いにカルシウム塩添加が影響を及ぼしていなかった。また、ク溶率はカルシウム塩添加により85%前後からむしろ減少する傾向にあった。 溶融により生成したリン酸塩結晶は、X線回折の結果、ゲーレナイトもしくはシリカコーノタイトと考えられた。また、X線マイクロアナライザーによるリンのKαX線像から、熱処理汚泥では、均一に分布していたリンの存在がカルシウムの添加により斑点状になった。カルシウムの存在によりリンが局在化したことから、リンとカルシウムが結晶になっていることが考えられた。 汚泥焼却灰とカルシウム塩を混融させることは石灰系の凝集剤を使用していない場合には、リンの有効性を上昇させることが可能である。しかし、石灰系の凝集剤を使用している場合は、その効果がない。 下水汚泥焼却灰を溶融することは、多額の設備投資が必要であるが、リン資源の再循環が緊急課題となったときには有効な手段であろう。
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