研究概要 |
(1)社会心理的ストレス状況下での情動認知と扁桃体の役割:計画に従い心理的ストレス負荷による心機能の経時的変化、および扁桃体損傷の影響を調べた.条件刺激に対して心理ストレス群は心拍数の減少が、電撃ストレス群は心拍数の増加がみられた.心理ストレス群では条件刺激に対する変化が経時的に増強した.電気刺激後では心理ストレス群は電気刺激を受けていないにもかかわらず心拍数は増加した.扁桃体損傷により両群とも条件刺激期の変化が有意に抑制されたが、刺激後の心拍数には変化がなかった(投稿予定). (2)社会心理的情動刺激に対する神経情報処理様式の解明:驚愕反射の反応強度を指標に、電気ショックを用いた恐怖条件付け課題遂行中のラット扁桃体からニューロン活動を記録し,情動認知・記憶・表出の神経情報処理様式を解析した.扁桃体には恐怖情動に特異的に応答するニューロンがあり,恐怖条件付けを訓練しなかった群での扁桃体ニューロンの応答割合は条件付けを訓練した群の半分であった.驚愕反射の恐怖による反応増強は扁桃体ニューロンの応答強度と緩やかな相関を示していた.また,ラット扁桃体のprepulse inhibitionに対する関与をニューロン活動レベルで調べた.扁桃体ニューロンの30%が驚愕反射を伴う学習課題に応答した.その内,11ニューロンがprepulseの試行中に応答した(NS meeting発表,投稿予定). (3)情動記憶と扁桃体におけるLTPの役割:この目的を遂行するために動物がある特定の場所に来たときに電気ショックを与えるという場所と恐怖条件付けを連合させた学習課題を開発し,場所に連合した恐怖情動学習の行動学的特性および中枢機序を調べた.場所の恐怖条件付けは2日間の条件付け訓練により学習し,ショックを与えないテスト期間中も記憶していた.扁桃体中心核,外側基底核損傷により場所の恐怖連合記憶は障害されオープンフィールド全体を動くようになった(研究遂行中). 以上の結果は扁桃体が心理ストレスの認知,恐怖情動の学習・記憶・発現,環境と連合した恐怖情動の学習に関与していることを示唆している.扁桃体とLTPの関係に関しては今後継続して進めていく計画ある.
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