研究概要 |
今回の研究は、心不全患者における運動耐容能と神経体液性因子の関係について検討するため、血漿ノルエピネフリン濃度(NE)とマグネシウム動態を用いて検討した。対象は心不全患者16名(平均64.9±10.0歳)、対象者すべてに心肺運動負荷試験を施行し、AT、peak VO_2最大運動時間を測定した。また安静時と最大運動時の血漿ノルエピネフリン濃度、血清マグネシウム値、赤血球内マグネシウム値を測定した。血清マグネシウム濃度は運動直後に有意に増加し(p<0.01)、赤血球内マグネシウム濃度は減少する傾向を示した(p<0.1)。安静時血漿ノルエピネフリン値は、AT(p<0.05,r=-0.57)、peak VO_2(p<0.05,r=-0.55)、最大運動時間(p<0.01,r=-0.62)と有意な負相関を認めた。安静時血漿ノルエピネフリン濃度を平均値からの高低で2群に分けた場合、安静時赤血球内マグネシウム濃度は、high-NE群(2.2±0.3mg/dl)でlow-NE群(2.7±0.5mg/dl)に比し有意に低値を示した。 これらの結果は、運動耐容能が低く安静時血漿ノルエピネフリン濃度が高い慢性心不全患者は細胞内のマグネシウムが低値であり、これは日常のストレスにより細胞内から細胞外へのマグネシウムの移動によることが原因と思われた。以上より、細胞内低Mg血症が心室性不整脈や突然死などの心事故を増加させる可能性があると考えられた。今後は、さらに詳細な検討を行う事で心不全患者の病態の把握、治療への応用が可能と考えられた。
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