研究概要 |
全例胸痛を主訴にして来院し心臓カテーテル検査を入院中に施行している心筋梗塞患者100名(平均年齢は60.9±10.6歳)を対象に心機能、心肺運動負荷試験、運動負荷時採血を行った。心機能評価は発症から1ヶ月の時点の心臓カテーテル検査で求められた左室拡張末期容積とEjectional Fraction(ET)を使用した.心肺運動負荷試験はとレッドミルを用いてramp法により行い酸素摂取量(VO2)、二酸化炭素排出量(VCO2)を測定し、運動負荷試験中に肘静脈に留置したカテーテルより採血を行った. 全対象者の1ヶ月の時点の平均EFは49.4±11.1%であり、最高酸素摂取量(peak VO2)は22.8±4.2ml/min/kgであった.全対象者中EF45%以下の心機能低下症例は32例(32%)であった.EF45%以下であった32例の1ヶ月時点のpeak VO2(21.5vs23.0),AT(14.4vs14.9),血漿ANP濃度(39.2vs35.9)、BNP濃度(97.8vs66.2)はEF45%以上の症例と比較しても有意な差は認められなかった.それに対してpeskVO2 14ml/min/kg以下の症例は1ヶ月の時点では2例(2%)のみで、アメリカの心臓移植の対象となるような著しい低運動耐容能の症例は極めて少なかった.この2症例とも発症3ヶ月の時点では明らかな改善を認めていた(13.3→15.5、13.8→22.9)。しかし3ヶ月の時点でpeak VO2 14ml/min/kg以下であったは2例認めており、両症例ともlヶ月の時点より運動耐容能の悪化を認めていた(14.6→13.2、17.5→13.9).この2症例とも3ヶ月の時点の血中ANP濃度(210、240)、BNP濃度(360、830)は著しい高値を示していた.日本の虚血性心疾患のEFに代表される左室機能で分類すると心機能低下症例は30%程度存在したが、それらの症例は運動耐容能や血中体液性因子の低下はみられなかった.しかしpeak VO2で分類すると低運動耐容能症例は極めて少なく、特に3ヶ月の時点でも低かった症例は明らかな体液性因子の異常も認めた. 日本ではアメリカでの心臓移植の適応基準であるpeak VO2 14ml/min/kg以下の症例は極めて少なかったが、3ヶ月の時点で低値であった症例はその他の因子も低値であり潜在性重症心不全である可能性が考えられた.
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