研究概要 |
【背景】TNF-α遺伝子は、第6番染色体の短腕のいわゆるHLA領域内(classIII region)に存在している。このため、従来我々が報告したJRAにおけるHLAの疾患感受性の検討結果がその近傍に存在するTNF-αの多型を反映したものである可能性が考えられる。よって今回、このTNF-αのプロモーター領域の多型性の解析を行ない検討を加えた。 【方法】日本人JRA患者集団111名(全身型50名、少関節型29名、多関節型32名)を対象として、PCR-SSOP法を用いて解析した。すなわち、TNF-αgeneのpromoter領域(-66から-1107までの1042bp)をPCR法により特異的に増幅の後、各PCR産物をナイロンフィルターにドットし、これと既知の2つの多形を示す塩基部位(-308G to Aおよび-238G to A)と我々が独自に同定した3つの多形性を示す塩基部位(-857C to T,-863C to Aおよび-1031T to C)について各々の塩基配列に対応したsequence-specific oligo-nucleotide probe(SSOP)をハイブリダイゼーションさせ、その反応の有無により判定した。 【結果と考察】3病型のうち、全身型JRA患者群においてのみ、TNF-α遺伝子のプロモーター領域の多型のうちの-1031C,-863A,-857Tの3種のアリル頻度が有意に増加していた。さらにこれらのアリルを持つものは持たないものに比べ、約2倍のTNF-α産生能を有していた。この事は、全身型JRAが他の2病型に比して、全身の炎症所見が強く、TNF-αをはじめとする炎症性サイトカインの産生亢進がより著明であるという臨床的特徴を反映しているのかもしれない。
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