研究概要 |
疑似乱数の組織的な検定法を開発したので報告する. 教科書等にある検定法を眺めていると,あまり組織的でないような印象を受ける.とくに,種々の検定法の相関関係が明瞭でない,たとえば検定法Aと検定法Bの間に強い相関がある場合は,基本的にどちらか一方を実施すればよく,多くの手間を費やして両方とも実施する必要はない.その時間をまったく相関のない検定法Cに費やすのがよかろう. そこで,初めから相関の様子が分かっている検定法たちを用意しておくのはよいことだろう.当該研究では,どの二つの検定も無相関であるような検定系,―「直交検定系」と呼ぶ―,について調べた.直交検定系は系全体としては無相関ではないけれども,それに近い性質を持つ. 直交検定系の例として種々の「パリティ検定系」を提唱する.パリティ検定系はただ1つの検定法ではなく,あるパラメータUを持つ直交する検定法の集合体である.パラメータUの取り方は,事実上,無数にあるので,相関の小さい無数の検定を行うことができる.まだ,完全に組織的な数値実験には至ってないが,メルセンヌ・ツイスター(最大周期列法―いわゆるM系列―の一種)や無理数回転による疑似乱数生成法に関する検定結果を例として挙げた. 結果は,近く発行される京大数理解析研究所講究録「確率数値解析に於ける諸問題IV」で発表予定である.
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