研究概要 |
Kを総実代数体とする.K係数の正値2次形式に付随するtheta級数はHilbert保型形式となる:変数の個数が小さいとき,その2次形式の表現数,およびその表現数と代数体のL-関数の特殊値との関係を調べるには,重さの小さいHilbert保型形式の空間を調べる必要がある. 主に2次体のHilbert保型形式の空間を調べたが,まずHilbert modular曲面のreducible locusを一般的に記述することに成功した.〓Kを整数環,〓Kをdifferentとする.整数環のZ上の基底λ,ηで,ληのノルムが負になるのは単数による作用を除いて有限個しかない.この有限集合と群【numerical formula】に対するHilbert modular多様体のreducible lociとの間には1対1の対応が付けられる.2次のSiegel modular caseでV.A.GritsenkoとV.V.Nikulinがtheta級数の無限積表示を具体的に与えた.上に述べた結果の一つの応用として次ができる.Hilbert modular多様体を2次のSiegel modular多様体に自然に埋め込むmodular emmbedingと言われる写像があるが,2次体のtheta級数は2次のSiegel modular caseのtheta級数をmodular emmbedingの写像で引き戻したものになる.これにより2次のHilbert modular caseでもtheta級数の無限積表示を得ることができた.本研究ではさらにHilbert modular曲面がある条件を満たせば重さ1/2および3/2のHilbert保型形式の空間の次元が求められることが分かったが,この点については具体的例を調べる余裕がまだなく応用はまだである.
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