研究概要 |
第一に,心臓一心周期の各時相における複数断面のMRI画像に対して,画像データを積層して作成したボリュームデータをデータ可視化ツールで読み込んで3次元モデルとして可視化した.心拡張期に付された磁気標識の位置の読み取りはマニュアルで行った.2次元画像面内での変形と画像面外への変位を考慮した3次元的変形の評価は作成したプログラムを用いて行える.さらに,位置データの空間的時間的集合体のモデルに対する誤差評価と,心周期後半の位置の読みとり困難なことへの対策として位置データの平滑化手法の提示をした.第二に,従来の心臓・血管壁の構成式の調査と骨格筋・心筋・血管平滑筋の能動的変形挙動に対するモデル化との比較検討を行い,血管壁の能動的変形挙動を記述する非弾性構成式を定式化した.また,血管壁構造の有限要素モデルの構築と壁を構成する受動的要素と能動的要素に対する構成式の定式化を行って有限要素解析を実施した.本モデルは血圧負荷過程の血管壁の収縮挙動を概ね記述した.第三に,心臓壁内に血管壁が存在する場合の有限要素解析と種々の変形形態が血流抵抗に及ぼす影響の定量的評価を行った.この結果を基に肥大心について検討した結果,内壁側への壁の肥大が顕著な場合には,正常心と比較して同一円周上で同じ収縮量が得られても,半径の小さい内壁側ではより大きな収縮およびそれに直交する方向への伸長を生じることと,壁厚の増加は大動脈から冠動脈への入口から心内膜側までの心臓壁内の血管長を増加させることから,冠血流の抵抗が顕著に増加することがわかった.
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