研究概要 |
自然界の諸現象のモデル化の見地から,非線形現象に関しては古くから多くの研究が行われてきた.その中でも特に近年高次元非線形システムにみられるカオス現象が非常に注目を集めている. 高次元非線形システムに生ずるカオス現象の1つとして複数の低次元カオス自励振動系を結合して構築した高次元系の研究が近年盛んに行われている.特にカオス同期や多段結合系においてカオス現象が伝搬し時間的にも空間的にもカオス的な現象についての研究が盛んに行われている.第1篇ではカオス発振器の結合系に生じる非同相同期現象と自己スイッチング現象について得られた研究成果を詳細に示し,さらに関連する発表論文を添付する. 第2編では系のパラメータがカオス的に変動する系や,異なった結合系に生ずる現象について研究したものである.単純な低次元カオス自励振動系でもカオス現象を生ずるための本質的な役割を持っているパラメータを時間的に変動させた場合に生ずるカオス現象は従来のカオス現象とは全く異なる性質を示す.パラメータの変化がきわめてゆっくりしている場合には,それ程興味ある現象は期待できない.しかしながらパラメータの変化がかなり早い場合には,過渡現象が終わらないうちに次ぎから次にパラメータが変化するため,低次元のカオス自励振動系では予測できない現象が生ずる.特にパラメータの時間変化が,カオス的である場合には,きわめて複雑なカオス現象が生ずる.簡単な電子回路実験でも通常のカオス現象とは全く異なる現象が生じることを確認した.さらに,2つの同じようなカオス自励振動系の出力信号でもって他の振動系のパラメータを変動させた場合には更に異なった現象を生ずることが予想されるが,これについても電子回路実験の結果によりきわめて複雑なカオス現象が生じることを確認し,さらに計算機シミュレーションによっても確認した.
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