研究概要 |
本プロジェクトでは,プロセスモデリングに関わりのある金属,半導体及び酸化物の融体の熱伝導度を測定し,その熱伝導機構を考察することを目的とした。考察は,特に,Wiedemann-Franz則の高温の金属への適用性と,フッ化物の添加がシリケート融体の熱伝導度に及ぼす影響について行った。 1.溶融金属・半導体の熱伝導度測定法の開発 「絶縁被覆した非定常熱線法プローブ」を開発し,Hg及び溶融Pbの測定を行った。Hgの熱伝導度は室温で8.2W/mK,溶融Pbの熱伝導度は573Kで15W/mKと測定され,文献値と良く一致した。 2.溶融Sn及びSn-In合金の熱伝導度 溶融Snの熱伝導度は600Kで28W/mKと測定され,温度上昇に対してわずかに増加した。また,Inの添加により,熱伝導度は低下し,また,その温度依存性は小さくなった。 3.高温の金属におけるWiedemann-Franz則の適用性 自由電子理論によるWiedemann-Franz則の導出では,自由電子の比熱を用いていた。現実の金属の状態密度から電子比熱を計算し,その値と電気伝導度の値から熱伝導度を推定する新しい式を考案した。 4.溶融Siの熱伝導度 測定値は1700Kにおいて57W/mKであり,温度上昇とともにわずかに増大した。一方,固体Siの熱伝導度は融点直下の1673Kで19W/mKと測定され,Siの熱伝導度は融点で急激に増大することが分かった。 5.溶融アルカリシリケートの熱伝導度 非定常熱線法によって測定した溶融アルカリシリケート(Li_2O-SiO_2,Na_2O-SiO_2,K_2O-SiO_2)の熱伝導度は,アルカリイオンの半径が大きくなるにつれて小さくなった。酸素イオンの電子分極率から,アルカリイオン-非架橋酸素間の結合がイオン性であるほど,熱伝導度の値は小さくなると結論した。 6.フッ化物含有アルカリシリケート融体の熱伝導度 Li_2O-SiO_2及びNa_2O-SiO_2の各系にLiF及びNaFをそれぞれ添加し熱伝導度を測定した。いずれの系においても,フッ化物の添加とともに熱伝導度は低下した。シリケートの熱伝導度はその網目構造に強く依存するために,この熱伝導度の低下は,フッ素による網目構造の切断に起因すると考えた。
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