研究概要 |
本研究では、作物根系の水ストレスに対する反応を、根系を構成する各根が発揮する可塑性に注目して検討し、根系の発育・機能の、耐早性における意義を明らかにしようとした。具体的には、以下の3点を明らかにすることを目的とした。 まず、イネについて、異なる土壌水分条件に対して、根系が発揮する発育・機能における可塑性を評価した。本研究では、乾燥後の降雨を想定した、水ストレス-再潅水、ならびに、とくにイネの天水田を想定した、湛水-乾燥-再潅水条件での根系反応についても併せて検討した。次ぎに、トウモロコシ,ササゲ,イネについて、加齢に伴って進行する根系の老化過程に及ぼす水ストレスの影響を精査した。3番目には、塊、根を形成するサツマイモを対象として,肥大した塊根の水ストレス下における水供給機能を定量的に評価しようとした。 その結果,根系の発育とかたちは、土壌水分条件によって大きく変わること、この根系に特徴的な大きな可塑性によって、水ストレス条件下での植物個体全体の生育が保障されること、そして、この根系の可塑性は、それを構成する根の間の水ストレスに対する反応性に差異によってもたらされることを明らかにした。また,水ストレス条件下で塊根が水供給源として重要な役割を果たす可能性が示唆された。これらのことによって、これら作物の耐旱性のメカニズムの中で果たす根系の役割が今後ますます明確となり、これまで顕著な進展が見られない耐旱性品種の育成、さらに水ストレスが問題となる地域での栽培技術体系を確立するための基礎的な知見が得られることが期待される。
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