研究概要 |
ヒト真菌症の原因として分離頻度が高いカンジダ属、アスペルギルス属およびクリプトコッカス属の真菌を、種のレベルまで迅速に検出・同定する遺伝子診断法、特にDNAトポイソメラーゼ遺伝子を標的としたPCR法による診断法の確立を目的として研究を進めてきた。塩基配列解析の結果、カンジダ属酵母では約2,300bp、アスペルギルス属は4,000から4,700bp、クリプトコッカス属では約2,000bpの塩基配列を決定できた。これらの配列を基にデザインしたプライマーを用いることにより15種の真菌種(カンジダ属10種:C.albicans,C.dubliniensis,C.tropicalis,C.parapsilosis,C.glabrata,C.guilliermondii,C.krusei,C.kefyr,C.lusitaniae,Y.lipolyticaおよびアスペルギルス属5種:A.fumigatus,A.niger,A.nidulans,A.terreus,A.flavus)の同定が可能となった。さらに、本方法を臨床検査材料中の真菌種の検出と同定に応用した結果、約85%がPCR陽性であり、ほとんどがC.albicansであった。また、複数の真菌(C.albicansとC.glabrata)による混合感染の検査にも有効である.ことが確認できた。 カンジダ属酵母のDNAトポイソメラーゼII遺伝子の塩基配列解析の結果、C.parapsilosisおよびC.tropicalisには少なくとの2つのgenotypesが存在することが明らかとなった。さらに、本遺伝子の塩基配列を基に病原性カンジダ属酵母のphylogenetic relationshipを検討したところ、カンジダ属は、少なくとも3つのクラスターを形成し、それぞれはほぼ同時期に分かれたものと考えられた。
|