研究概要 |
1.肥大型心筋症の家系調査ならびにサンプル収集:北陸地方における肥大型心筋症の調査を行ない、関連の認められない肥大型心筋症発端者患者270名を見い出した。これら270名について、インフォームド・コンセントを得た後、家族に関する聞き取り調査、心電図検査、心エコー図検査、遺伝子診断用採血(EDTA血10ml)を実施した。 2.トロポニンI遺伝子変異の検索:270名の肥大型心筋症発端者患者について、末梢血白血球からgenomic DNAを抽出し、心筋トロポニンI遺伝子に対して作成したprimerを用いてPCR-SSCP法にてスクリーニングを行った。さらに、異常バンドが認められたものに対してはオートシーケンサーを用いてDNA配列を決定した。その結果、10名に心筋トロポニンI遺伝子Lysine183欠失変異を見い出した。また、同意の得られたこれら10名の家族70余名についても同様の検索を実施した。 3.臨床的特徴の把握:上記10家系70余名の臨床的特徴について検討した。その結果、以下の特徴が明かとなった。(1)本遺伝子変異による肥大型心筋症は10歳代前半より発症し、心電図II, III, aVF, V5,V6誘導における異常Q波が最初に出現する。(2)心エコー図検査では10歳代後半より壁肥厚などの異常が出現し、心エコー図での異常は心電図異常に遅れて出現する。(3)本遺伝子変異による肥大型心筋症は浸透率が極めて高く、20歳以降ではほとんどのものが発症する。(4)遺伝子変異を有するものの約30%は40歳以降に収縮不全をきたし、これらの症例では心室中隔壁厚の減少と収縮機能の低下に相関が認められる。
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