研究概要 |
我々は以前より研究を行っていた放射線高抵抗細菌である原核細胞(Deinococcus radiodurans)を用いて重粒子線の殺細胞効果をDNA分子レベルでの解析を行った。この機序解明のため種々の重粒子線の酸性加温(Acid heating)によるDNA分子の損傷機序について行った。用いた細胞は増殖が早く、放射線高抵抗性で取り扱いが容易な原核細胞D.radioduransである。重粒子線は、炭素重粒子線(290MeV/u,LET=80keV/μm)、アルゴン( 460MeV,1800keV/μm)、ネオン(350MeV,LET=300keV/μm)、酸素(160MeV,LET=400keV/μm)、炭素(220MeV,LET=100keV/μm)、ヘリウム(50MeV,LET=14keV/μm)のである。 大腸菌細胞を代表とする原核細胞ではLETを横軸にした時、細胞死滅を指標としたRBE値にピークは存在しないという事が従来の定説とされて来たが、今回 使用した大腸菌野生株では、100keV/μmあたりにピークが存在するという新知見が得られた。更に、D.radiodurans細胞では、RBE値とLET値の関係の曲線は、乾燥細胞では凹型、湿潤細胞では凸型となる事が判明した。温熱を併用すれば殺細胞効果的は増強する。この機序はDNAのDepurinationと推定している。現在これら結果平成11年の「原核細胞におけるLETとRBEの関係に関する新知見」の論文で発表した。 この細胞の殺細胞効果の機序の解明のため、現在の癌治療で用いられている温熱(Hyperthermia)を併用した。γ線照射では抵抗を示したこの細胞でもα線照射では殺細胞の相乗効果を示した。
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