研究概要 |
我々は羊膜移植の基礎的研究の第一歩として、正常ヒト羊膜の組織抗原の検索およびラット眼表面へ羊膜を移植した異種移植モデルにおける術後の免疫反応について免疫組織学的に検討した。方法:正常ヒト羊膜の組織抗原を検出するためにヒトclass I,class II抗原、Fas,Fas ligandに対するモノクローナル抗体を用いて免疫組織染色を施行した。また、羊膜を用いたヒト臨床モデルとしてラットへの輪部移植と、拒絶観察モデルとして角膜層間への移植を施行。術後経過を観察し、組織学的検査としてH.E.染色や免疫組織染色を施行してリンパ球を含めた炎症細胞の浸潤等について検討した。結果:ヒト羊膜の上皮、実質においてclass I抗原、Fas抗原の発現が著明に認められ、class II抗原、Fas ligandも実質内に微弱ながら認められた。凍結保存後1ヶ月と6ヶ月の組織抗原の発現性に差はみられなかった。輪部移植モデルでは、移植羊膜は術後通常の異種移植にみられるような急性拒絶反応を認めず、移植羊膜に対するラットhelper T cell,suppressor/cytotoxic T cell,macrophage等の細胞浸潤は軽微であった。角膜層間モデルでは創部に達する軽微な血管侵入を認めたが、術後6ヶ月でも全例透明性を維持しており、移植羊膜に対するリンパ球浸潤は認めなかった。凍結保存による羊膜の抗原性が低下もしくは羊膜細胞の死により拒絶反応が起きなかった可能性があるため、我々は更に凍結保存1ヶ月の羊膜を用いてトリパンブルー染色による上皮細胞の生存度および、DMEM培養液を用いた羊膜上皮細胞の培養を行いその可能性について検討した。その結果、死細胞を示すトリパンブルー染色陽性細胞は一視野中半数程度に止まっており、培養にて上皮細胞の増殖を認めたことから、凍結保存羊膜においても細胞は生存していることが明らかになった。結論:異種移植においても羊膜は拒絶されないことから、羊膜はImmune privileged materialであると考えられた。
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