Stevens-Johnson症候群、眼類天疱瘡、角結膜熱傷などの難治性、瘢痕性角結膜疾患に対して近年、ヒト羊膜を用いた眼表面再構築術が注目されつつある。我々は、羊膜移植に関する基礎的研究の第一歩として、平成11年度は羊膜の組織抗原の検索を行った。帝王切開にて無菌的に採取された胎児膜からヒト羊膜を分離し、超低温冷凍庫に保存後、組織抗原に対するモノクローナル抗体を用いてABC法にて免疫組織染色を施行した。用いた抗体はヒト主要組織織適合抗原(MHC)に対する抗ヒトclassI抗体である抗HLA-ABCG(W6/32)、classI抗原のlight chainに対する抗β_2ミクログロブリン、より強い細胞性免疫や液性免疫を惹起する強い移植抗原であるclassII抗原に対して抗HLA-Dを用いた。また、抗Fas(CD95/apo-1)抗体抗体と抗Fas ligand抗体を用いて羊膜における抗Fas-Fas ligand systemの存在を検索した。その結果、classI抗原に対しては、羊膜上皮、間質、線維芽細胞層のすべての有核細胞で強い腸性所見を認めた。染色性は6ヶ月間の凍結期間でも低下せず、凍結保存羊膜においても恒常的なclassI抗原の存在が示唆された。一方、抗classII抗体に対しては、羊膜上皮は全く染色されないものの線維芽細胞に腸性所見を認めた。これらの結果から、羊膜移植において従来から指摘されていたようなHLAが発現されない為に拒絶反応を惹起しにくいとは考えにくく、羊膜における免疫学的特性が示唆された。また、間質細胞の一部にFas ligand陽性細胞を認め、羊膜移植時の免疫抑制に関与しているものと思われた。
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