研究概要 |
界面活性剤による超原子価ヨウ素化合物の触媒的活性化とその触媒的不斉酸化反応への応用を目指して研究実施計画に基づき研究を行った。昨年度、我々はカチオン性界面活性剤であるcetyltrimeth ylammonium bromide(CTAB)により形成される逆相ミセル反応場(トルエン-水の混合溶媒系)に触媒量のジアシル酒石酸を添加し、極めて溶解性が低く反応性も低い5価のヨウ素試薬であるヨードキシベンゼン(PhIO_2)を用いることにより良好な光学収率でスルフィド類からスルホキシド類への触媒的不斉酸化反応が進行することを見出した。今年度は本法の一般性の拡張とより簡便な不斉酸化法の開発を目指し検討した結果、PhIO_2を水中、触媒量のジアシル酒石酸とKBr存在下で用いることによりスルフィド類の不斉酸化反応が比較的良好な光学収率で進行することを見出した(Chem.Pharm.Bull.,2000)。これまで超原子価ヨウ素試薬を用いる不斉酸化反応では当量以上の不斉源が必要であり光学収率も極めて低かったことから今回見出した方法は水中で良好な不斉収率が得られた点で今後、有望な不斉酸化法となりつると期待される。一方、このKBrによる水中での超原子価ヨウ素試薬の活性化によりこれまで3価のヨウ素試薬では難しかったアルコール類の酸化反応が中性緩和な条件下、水中で収率良く進行することを見出した。また、リサイクルが容易なポリマー担持型超原子価ヨウ素試薬の水中での利用により後処理が容易で有機溶媒不要且つ廃棄物の少ない環境に優しいアルコール類の酸化反応を実現できた(Angew.Chem.Int.Ed.,2000)。さらに、ポリマー担持型ヨウ素試薬が酸化的ビアリールカップリング反応にも有効であることを見出し、実用的なビアリール合成法の開発にも成功した(Tetrahedron,2001)。
|