研究概要 |
混合状態下にある高温超伝導体(HTS)の磁気遮蔽性能を数値的に調べた.MPMG-YBCO超伝導体がもつ臨界電流密度の結晶学的異方性を再現するため多薄層近似を導入すると,遮蔽電流密度の振る舞いはスカラ関数に関する微積分方程式(遮蔽電流密度方程式)とJ-E構成方程式で表される.本研究では,J-E構成方程式にflux flow creepモデルを採用し,臨界電流密度及びflow抵抗率の磁場依存性を考慮するため,Kimモデル及びBardeen-Stephanモデルを用いた. 有限要素法とθ法を用いて同方程式の初期値・境界値問題を離散化すると,同問題は各時間ステップで非線形方程式G(s)=0を解く問題に帰着する.この非線形方程式の解法に減速Newton法と逐次代入法を適用すると,いずれの場合も収束解を得るのに莫大なCPU時間を必要とする.これは,収束性を保証するために時間刻みと不足緩和係数を十分小さく取らねばならないからである.この難点を克服するため,本研究では,残差ノルム‖G(s)‖が反復回数に関して単調減少する修正Newton法を開発した.同法を非線形方程式G(s)=0の解法に適用すれば,減速Newton法に比べて極めて少ない反復回数で収束解が得られる. 修正Newton法を用いて遮蔽電流密度の時間発展を解析する数値シミュレーション・コードを開発し,同コードを用いて,混合状態下にあるHTS板の磁気シールド性能を調べた.その結果,高温超伝導板の磁気遮蔽性能は100Hz以下の低周波磁界に対しては時間依存性をもつのに対して,高周波磁界に対する遮蔽性能は時間依存性をもたないことが分かった.さらに,高温超伝導体は,たとえ混合状態下にある場合でも,100Hz程度の高周波磁界を遮蔽できることが判明した.
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