研究概要 |
歯科領域において,セラミックス系材料は,審美性,生体親和性等に優れた材料として一定の評価を受けているが,金属ほどの強度,耐久性を示すには至っていないのが現状である.一般にセラミックスは溶融金属に濡れないため,両者の複合化はかなり困難であった.しかし最近では,合金融液を高温で酸化することにより,セラミックス/金属複合体を製造する金属酸化法(Directed Metal Oxidation法,ランクサイド法)が,一般工業界では部分的に実用化され始めている。そこで本研究においては,この金属酸化法を応用し,原材料として平均粒径1μmと8μmのアルミナ粉末と,平均粒径25μmのアルミニウム粉末を混合し,セラミックス/金属複合体の作製を試みた.日本タングステン(株)の協力を得て,高周波誘導ホットプレス装置を使用し,大気雰囲気中でアルミニウムの融点に近い660℃で250kgの加圧焼結を行なったところ,良好で繊密な複合体試料を作製することに成功した. この試料の歯科臨床応用への可能性を検討するため,幾つかの機械的性質の測定を行い,従来の歯科用セラミックス材料である市販のCAD/CAM用セラミックスブロックと,セラミング処理を施したキャスタブルセラミックス材料との比較を行った.アルミナ/アルミニウム複合体試料は,3点曲げ試験では従来の歯科用セラミックス材料よりも高い曲げ強度を示した.逆に試料表面のヌープ硬さは,アルミナ/アルミニウム複合体試料は,従来の歯科用セラミックス材料よりも小さな値を示し,天然歯に近い生体親和性に優れた材料ということができる.このように本研究におい,金属酸化法で得られたセラミックス/金属複合体材料の歯科材料への応用の可能性が示唆された.
|