研究概要 |
ヒト免疫不全ウイルス1型(HIV-1)の特徴の一つがアクセサリー遺伝子を有する事である。特に、アクセサリー蛋白質Vprは、核移行、細胞周期のG2期停止、アポトーシスおよび免疫抑制などの多機能性を発揮することで、HIV-1複製に大きく寄与している。本研究では非分裂細胞におけるVprの未知の機能を解明するために、Vpr発現adenovirusベクターあるいはR5 tropic virusとそのVpr欠損ウイルスをMacrophageと樹状細胞に感染させ、Vprによって発現が変動する宿主遺伝子をマイクロアレイ法により網羅的に解析した。 昨年度は、MacrophageにおけるHIV感染において、Vpr発現によりinterferon誘導遺伝子、IFIT1,T2,MX2などの発現が低下することを明らかにした。一方、Vpr発現アデノウイルスベクターを用いた系では、これらの遺伝子の発現が上昇することを見出した。樹状細胞においても同様の傾向が認められた。そこで、本年度は引き続いてreal time PCRを行ない、Vpr発現によりIFN誘導遺伝子の発現上昇が確認されることを確認した。さらに、Western Blottingにおいて蛋白の発現レベルを解析した結果、STAT1,TRAIL,IRF7,ISG20の発現の上昇とSTAT1のリン酸化も増強されていることを立証した。以上の結果から、Vpr単独発現はType I interferonのJAK-STAT pathwayの活性化に関与することが示唆された。 続いて、Ubiquitin結合酵素の一つであるUBE2C遺伝子の発現がVprによって低下することが見出された。Real time PCRによって、感染後1,3および10日目にVprの発現によってUBE2C遺伝子抑制されることが確認された。そこで、UBE2Cをon-target siRNAによってノックダウンして、flow cytometryによって細胞周期の解析を行った。その結果、コントロールsiRNAに比べてUBE2C特異的siRNAを行った細胞はVprのG2期arrest効果を約10%上昇していた。さらに、ノックダウンすることにHIV-1感染における意義を解析し手いる。さらに、IFIT1,IFIT2およびIFIT3のHIV-1感染における役割を明らかにするために、IFIT1,IFIT2およびIFIT3のsiRNAによってノックダウン後に感染実験を行った。
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