研究概要 |
本研究では、乳児の脳機能の計測を行うことによって、乳児期における色カテゴリカル知覚の脳内処理の移行過程を解明し、言語と色カテゴリカル知覚の関連性を明らかにすることを目指す。具体的に、本研究は乳児と成人を対象に,近赤外線分光法(NIRS)を用いてカテゴリカル色知覚に関連する脳活動の計測を行った. 脳機能計測では、「異なる色カテゴリに属す2色を提示する条件」と「同一の色カテゴリに属す2色を提示する条件」における脳活動の違いをNIRSによって測定した.NIRSのプローブは乳児の両側頭に設置し,左右半球の活動量を比較した.計測の結果,「異なる色カテゴリに属す2色を提示する条件」では,ベースラインと比べると両側頭の酸素化ヘモグロビンの有意な増加が示された.一方で,「同一の色カテゴリに属す2色を提示する条件」では,酸素化ヘモグロビンの増加は示されなかった.さらに,「異なる色カテゴリに属す2色を提示する条件」では、酸素化ヘモグロビンの増加は,左半球に比べて右半球でより高い傾向がみられた.本実験では,色カテゴリ間と色カテゴリ内の情報を処理する時に,乳児の脳血流反応が異なることをはじめて示すことができた.色カテゴリカル知覚の脳内処理の移行過程を検討するため、成人を対象とした実験も行った。実験条件と刺激は乳児実験と同様であった。成人においても乳児と類似した脳血流反応を検出したが、活動の領域が乳児よりも広いことも確認した。この結果は、カテゴリカル色知覚の神経基盤の発達過程を反映したと考えられる。 この研究成果について、現在査読付きの国際誌に投稿準備中である。
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