研究概要 |
本研究課題は、情動反応が注意の補足にどのような影響を与えるかを実験的に調べることである。よって、情動、注意、そしてこの2つの認知機能の相互関係を検証し、本研究課題を解明することが目的である。3年目は2つの研究を行った。1つ目の研究は、注意と情動の相互関係について調べる研究として、直視が意識的に知覚されないように提示された際、脳内でどのように処理されているかについて検討した。2つ目の研究は、注意に関する研究で、直視の処理に注意処理が必要か否かを検討した。 1つ目の研究 : 強い情動反応を喚起する直視(他者が自分を見ている視線方向)を視覚刺激として用い、それを意識的に知覚できないように操作した際、その情報が脳内でどのように処理されているかについて検討した。意識の操作はContinuous flash suppressionを用い、脳計測は脳波を用いた。結果として、他の視線方向と比べて直視を意識的に知覚できないように操作した際、前頭・頭頂領域にて刺激提示後200㎳~250㎳で陰性方向に大きな脳波の振幅が見られた。従って、本研究は情動を喚起する直視は他の視線方向よりも意識知覚される前段階ですでに優先的に処理されていることを示唆する。(Yokoyama, et al., Neuropsychologia, 51, 1161-1168) 2つ目の研究 : 情動処理と関わりがある直視の知覚に注意の処理が必要か否かを検討した。方法として、注意を操作できる二重課題法を用いた。結果として、直視は注意資源を直視に割り当てなくても知覚可能であることがわかった。また、他の視線方向(左や右を見ている視線方向)は注意の資源がないと知覚できないことが分かった。この事から、本研究は強い情動反応を喚起する直視は注意処理が生じる前に他の視線方向よりも優先的に処理されていることを示唆する。(Yokoyama, et al., Scientific Reports, 4, 3858)
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