研究課題
特定領域研究
我々は細胞先端部でのアクチン重合に関与する蛋白質としてN-WASPやWAVE1-3を採り、糸状仮足及び葉状仮足形成を行う蛋白質であることを提唱してきた。WAVEには3種存在するが、中でもWAVE2は普遍的に存在し、細胞運動の先端部に局在して、細胞の遊走に必須の役割を果たしている。WAVE1と2のノックアウトマウスを作成し、胎児線維芽細胞株を確立して、方向性をもった細胞遊走に関与しているかどうか調べた。WAVE2の欠損細胞では化学遊走因子に応答しての、細胞先端部での葉状仮足形成が起こらず、遊走速度も極めて遅くなっていた。一方、WAVE1の欠損細胞では、細胞先端部での葉状仮足形成は正常に生じたものの、上方に生じる膜ラッフル形成が生じなかった。これらの結果からWAVE2が細胞先端部で葉状仮足を形成し、細胞に推進力を与える本体であると考えられた。浸潤、転移のモデル細胞としてよく使われている、B16とその高転移細胞F10を用いて、WAVE2の関与を調べた。これらの細胞ではWAVE1とWAVE2が発現し、F10細胞において両者の発現が上昇していた。WAVE1とWAVE2をRNAiでノックダウンしたF10細胞を用いて、浸潤、転移能を調べた。WAVE1のノックダウンでは3次元コラーゲンゲル中の運動や浸潤には影響なかったが、WAVE2をノックダウンしたF10細胞は遊走能、浸潤とも抑制された。またWAVE2ノックダウンした細胞の肺へぼ転移も抑制されていた。これらの結果から、主にWAVE2が細胞の浸潤転移の際の、細胞運動に関与していると考えられた。
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