研究概要 |
我々が発見したペプチド性植物増殖因子ファイトスルフォカイン(PSK)は,アミノ酸5残基からなり,動物の増殖因子と同様に受容体を介してその機能を発現すると考えられた.これまでの研究からイネ細胞膜にPSKに特異的な結合部位が存在することを証明していた.本研究においては,PSK誘導体を用いて光アフィニティーラベルにより,この結合部位の分子量が120,160kDであることを示し,これらをグリコシダーゼで処理することによりそれぞれ10kD分子量が減少することが判明した.これらはPSKの受容体と考えられ,現在精製を行っている.PSKに含まれるチロシン2残基はいずれも硫酸化されており,しかもこの硫酸化が生物活性の発現に不可欠である.またチロシン残基が硫酸化されたペプチドやタンパク質は,動物では数多く報告され,研究もされてきているが,高等植物においてはPSKが最初の例である.そこで植物のチロシンタンパク質硫酸転移酵素(TPST)について研究を開始した.既に明らかになっているイネPSK前駆体遺伝子の配列から,PSKを含む十数残基のペプチドを合成し基質とした.動物TPSKを参考に,PSKを生産することが判明している植物を抽出して,TPSK活性を検定したところ,アスパラガスが最も活性が高いことが判明した.植物起源のTPSKは,動物起源のそれに比べて至適pHなどがやや異なるものの,おおむね類似の性質を示した.特に,硫酸化されるチロシン残基直前に酸性アミノ酸の存在することが,必要であることがこの場合も確かめられた.硫酸化される配列を複数繰り返すペプチドを合成し,これを用いてアフィニティー担体を作成して,これを精製に使用したところ,100倍以上の精製効率を達成できた.さらに特殊なアフィニティー法を用いて,本酵素の分子量を61-62kDと推定した.
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