研究概要 |
この研究はチタンインプラントに感覚機能をもたせるための基礎研究である.当初培養紳胞を用いて、チタン表面の微量元素の影響を検索する計画で実験を進めたが、チタン表面に元素をコーティングする技術が確立できなかった。それにかえて、構造力学的基礎検討を行って、感覚に必要な神経線維の存在要件を検討した。 1.細胞培養:ラット副腎髄質褐色細胞種由来のPC12細胞を用いて、培養実験を行った.金(Au)を用いて、培養用Dishをコーティングし、培養した結果、Auでは細胞は生育できないことがわかった. 2.必須微量元素蒸着法:当該金属をイオンスパッタリング法などを用いて元素添加を試みたがこの実験に用いる試料には適当でないことが分かった. 3.力学的構造解析:有限要素法を用いて,力学特性のモデル化をおこなった.その結果,大きな変位を示す部位がインプラント体から離れた部位にあることがわかった.このことは,力感覚器官がインプラントに密着していないほうが効率的であることを示している.総エネルギー密度でもインプラント最下点の位置より2.5-5mm下に最大値があることがわかった. 4.構造的要請:神経細胞が受容器において力を検出するには,力による変形が必要である.この研究の結果から,感覚受容器はインプラントに接触した部位ではなく,少し離れた皮質骨と海綿骨の境界近くに存在したほうが,力の検出能力が高くなる事が分かった.インプラントが骨と密に融合したいわゆるオッセオインテグレートの状態では,インプラントと骨の間に感覚器官が存在しても,ほとんど変位が無いため,力の検出能力は低くなることがわかった.従って,神経線維を誘導するなら骨の中の皮質骨と海綿骨の境界付近に誘導すべきであることが分かった.
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