研究概要 |
申請者は,一貫して3次元多様体の幾何的および位相的剛性定理の研究を進めてきた.特に,位相的剛性定理を証明する上で,普遍被覆に固有に埋め込まれた最小面積平面の存在が重要であることが分かった.Mを双曲3次元閉多様体としp : H^3→Mをその普遍被覆とする.このとき,M上には双曲構造とは限らないRiemann構造が定義されている仮定する.このRiemann計量から誘導されたH^3上の計量γをコ・コンパクト計量という.D.Gabaiは「H^3の境界S^2_∞上の任意の滑らかな単純閉曲線はH^3に固有に埋め込まれたγ-最小面積平面の境界になるであろう」と予想した(D.Gabai, J.Amer.Math.Soc.10(1997)).申請者は,本研究を通して,この予想が正しいことを証明した.さらに,Mが双曲多様体でなくても,Mの基本群π_1(M)がグロモフ双曲的群であれば同様の結果が成り立つことを証明した.すなわち,M^^〜をMの普遍被覆とするとき,その境界∂M^^〜上の任意のジョルダン曲線を境界とするような,M内^^〜に固有に埋め込まれたγ-最小面積平面が存在することが分かった. また,「擬フックス群の幾何的極限はどのような位相型をもつか?」という問題を解決することができた.すなわち,Σを種数が1より大きい向き付け可能な閉曲面とし,{ρn}を代数的に収束する擬フックス表現ρ_n:π1(Σ)→PSL_2(C)の列とする.ここで,擬フックス群Γ_n-ρ_n(π_1(Σ))からなる列{Γ_n}が幾何的に収束すると仮定する.この幾何的極限Gとするとき,H^3/Gが=Σ×[0,1]-χに同相になるようなクレヴァスχが存在する.逆に,任意のクレヴァスχ⊂[0,1]に対して,H^3/GがΣ×[0,1]-Χと同じ位相型をもつような擬フックス群の幾何的極限Gにが存在することも証明できた.
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