研究概要 |
スクッテルダイト型2元化合物は遷移金属元素(Co, Rh, Ir, Ni)とV属元素(プニクトゲン)が1:3の構成比を持つ化合物である。V属元素が作る大きな空隙(かご)の中に希土類原子やTh, Uが充填されたものが3元化合物(但し,遷移金属元素はFe, Ru, Os。充填スクッテルダイト型化合物とも言われる)である。 2元系と4f電子が非占有の3元La系の電子構造計算を系統的に行った。Niを除く2元系は基本的に半導体である。La系は1分子当たり1個の正孔を持つ金属で,大小2つのフェルミ面から構成され,大きい方は少し歪んだ立方体の形状をしており体積もブリルアン・ゾーンのほぼ半分である。よって,フェルミ面がネスティングを起こすことによる異常物性の発現が期待される。 PrRu_4P_<12>は金属絶縁体転移を,PrFe_4P_<12>は非磁性相転移を示す。これらは,相転移に伴い結晶変態を起こしていることが報告されたことから,対称性の考察より結晶変態はRu/Fe原子の平衡位置からの変位であることを導いた。これらの相転移は,この原子位置の変位を伴ったフェルミ面のネスティングによることを提唱した。 PrOs_4Sb_<12>は,最近新しく見つかった重い電子系超伝導体である。dHvA効果の実験がLaOs_4Sb_<12>とPrOs_4Sb_<12>に対して行われ,両者はほぼ同じフェルミ面を持つことが明らかになっている。4f電子が局在している立場にたつLDA+U法を用いて,非磁性基底状態を仮定して計算を行い,最終的によく局在した4f軌道を持つバンド構造が得られた。よって,この系は4f電子がフェルミ面の形成に参加していない重い電子系超伝導のはじめての例である。 希土類位置の局所対称性はT_hに属する。ここ20年以上に亙り,5種類の立方対称点群では,結晶場は同じ表式で書けると信じられてきた。これらの系を詳細に考察することによって,立方対称点群でもO, O_h, T_dの場合は従来の表式で良いが,TとT_hの場合は4回軸と覆転が存在しないことから新たな6次の項が残ることを示した。
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