研究概要 |
CeB_6は奇妙な反強四重極秩序を示す物質として有名であったが,異常を引き起こしていたのが反強的八重極子相互作用であることがわかったのはごく最近のことであり,八重極子モーメントの実態究明にはほど遠く,四重極子モーメントについても詳しいことはわかっていない。本研究では,RB_6の多重極子相互作用のミクロな起源を明らかにすることを主目的として,Ce_xR_<1-x>B_6(R=Nd, Gd)単結晶について核磁気共鳴をはじめとして種々の物性を調べた。Ce_xNd_<1-x>B_6では全x領域について調べ,T_N, T_Qのx依存性を明らかにした。x〜0.85,0.55,0.35を境に秩序状態の性格が大きく変わっており,x>0.35では2つの磁気秩序T_<N1>(低温側)とT_<N2>(高温側)が存在することが明らかになった。x>0.35では2つの磁気秩序転移が存在し,この濃度を境にCeイオンの基底状態での性格が非磁性的(x<0.35)と磁性的(x>0.35)に別れ,近藤状態がT_<N2>以下で存続していることが明らかになり,磁気秩序状態中の近藤不純物の問題として今後発展するものと期待する。また,CeB_6の反強四重極秩序相,反強磁性秩序相の核磁気共鳴の実験結果を定量的に解析し,八重極子モーメントからの寄与と反強四重極子モーメントからの寄与の分離に成功した。また,先に世良が予想していた磁場誘起反強磁性モーメントの奇妙な温度依存性が中性子散乱の実験で実際に確認され,CeB_6における八重極子モーメントがいかに奇妙な異常を引き起こしているかを明らかにした。単純な反強磁性秩序を示すと思われていたNdB_6が核磁気共鳴の実験から四重極子相互作用が重要な役割を果たしていることを明らかにした。Ce_xGd_<1-x>B_6では,Gdドープにより,四重極子相互作用は弱められるが,八重極子相互作用は強められることを見出した。また,Yb_<1-x>La_xB_6においてT_C=150Kで少数キャリアー強磁性秩序を示すことを発見し,現在精力的に研究を継続している。
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