研究概要 |
本研究では,二相系格子ボルツマン法を用いて気液および液液二相流に適用できる新しい3次元界面ダイナミクス解析法を開発し,それを用いてせん断流中の液滴の変形および分裂の挙動ならびに垂直管内の液相中にある単一あるいは多数の気泡の挙動を計算し,開発した方法の妥当性および計算精度を検証した。 本研究で得られた成果は,下記の通りである。 1.液液二相流(せん断流中の液滴の変形および分裂シミュレーション) (1)本計算結果は,既存の低レイノルズ数領域における理論,実験および数値解析結果と良く一致した。 (2)粘度比が1で同じキャピラリー数では,レイノルズ数が大きくなるに従って,液滴は変形および分裂し易くなる。 (3)粘度比を変化させた場合,粘度比が1の場合に液滴は最も変形よび分裂し易くなる。また,粘度比が10の場合には,液滴は変形し難くほぼ固体球のように運動する。 2.液液二相流(垂直管内の液相中にある上昇気泡シミュレーション) (1)単一気泡の形状は,既存の数値計算結果と良く一致した。なお,本手法では,密度比が1000倍まで安定に計算できることを確認している。二相系格子ボルツマン法を用いて密度比が1000倍の計算をした例は,世界的に見ても初めての試みである。 (2)多数の上昇気泡流では,エトベス数が小さい場合には,最初小さな気泡同士が合体して徐々に大きくなり,最終的には1つの大きな砲弾型のスラグ気泡が流路断面を満たすように上昇する。一方,エトベス数が大きい場合には,気泡の底部が少しくぼんだ形や偏平した形で上昇しながら合一と分裂を繰り返し,様々な形状の気泡が複雑に変形しながら上昇する。
|