研究概要 |
アルミニウム合金を地上および微小重力環境で電子ビーム溶接を行い,ビームの安定性,溶融池内の対流,凝固組織,気泡の挙動等に及ぼす諸因子の影響を調べた.まず,地下無重力実験センターの落下塔で使用するために,従来のものと比べて非常に小型の電子ビーム溶接装置を開発した.特に,フィラメントから試料までの距離は370mmと非常に小型化されている.ビーム径は3mmと大きく設定し,アーク溶接のような熱伝導型の溶接が行える仕様とした. 溶接試料の透過X線像を観察することによって,微小重力環境で気孔量が大きく減少することがわかった.また,5NAlとAl-6%Cu系合金を微小重力環境下および地上で横向き姿勢で突合せ溶接を行い,溶融池内のCuの分布から対流の度合いを測定することによって,これまで支配的であると言われていた表面張力による対流が,密度差による対流より小さいことを明確にした.このように,アルミニウム合金の溶融池内の対流が非常に弱いことは,微小重力環境下発生する気孔の数を地上環境下よりも減少させる一因となっている.また,原子状酸素をアルミニウム表面に照射することにより酸化皮膜の厚さを増加させた試料を用いて溶接実験を行うと気孔量が増加した.これらのすべて結果は4Al(l)+Al_2O_3(S)→3Al_2O(g)↑の反応によって気泡が生成する仮説を肯定する. また,地上でアルミニウム合金を横向き溶接を行った場合,微小重力環境下に比べて,溶融池下部では溶融池の垂れ下がりにより凝固速度が遅くなり,羽毛組織が形成しやすいこと,ビード中央部の結晶粒径が大きくなることを明らかにした.
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