研究概要 |
土壌微生物バイオマス(バイオマス)は、窒素(N)、リン(P)、硫黄(S)などの養分プールとして知られている。これら養分の植物への供給は、主にバイオマスの代謝回転を通じて行われると考えられているが、その実態は必ずしも明らかでない。特に植物根域におけるバイオマス形成に及ぼす植物の役割やバイオマスからの植物への養分移動に関する実証的なデータは著しく乏しい。そこで本研究は、1)植物根から放出される光合成産物がどの程度バイオマス形成に利用されるか,2)バイオマスのN, P, S要求量や、バイオマス中のN, P, Sが植物にどの程度利用されるか。3)植物根域におけるPの移動性にバイオマスがどの程度寄与しうるかについて検討した。その結果、 1.シコクビエに同化された^<14>CO_2の約0.5%がバイオマス中に^<14>C化合物として取り込まれ、植物根域におけるバイオマスの形成に,植物根から分泌される^<14>C化合物が利用されることが実証された(日本土壊肥料学会講演要旨集,46,32,2000)。 2.マサ土における微生物バイオマス中の限界N, P, S濃度は各々、85,62,11mg g^<-1>バイオマスであり、バイオマス形成に必要な最小限の可給態N, P, S量は各々、185,38,22mg kg^<-1>土壌と推定された。また、植物がバイオマス中のNを利用しうることがバイオマスに取り込ませた^<15>Nの利用によって明らかになった。しかし20-40mgN/kg土壌以下の低N濃度では、植物と微生物間で養分競合が生じることが推察された。さらにバイオマスPのみかけの代謝回転速度は、グルコース、ライグラス添加で各々、約37,42日とバイオマス炭素(82,95日)の2倍以上と速いことが明らかとなった(Soil Biol. & Biochem.,32,845-852,2000,Biol. Fertil. Soils,32,310-317,2000,Food security and sustainability of agro-ecosystems through basic and applied research (W.J.Horst et al. Eds.) Kluwer Academic Publishers, 622-623,2001,Soil Biol. & Biochem., in press)。 3.土壌中におけるPの移動が、バイオマス形成に伴って促進されることが、改良ポット(植物根域から数ミリ毎に土壌を採取できる)への^<32>Pの利用によって明らかになった。
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