研究概要 |
シリンダー型インプラントは,埋入術式が比較的容易であり,フィクスチャー先端部に丸みを持たせることで応力の集中を避けられるなどスクリュー型インプラントより優れたいくつかの特徴を有している。シリンダー型インプラントにおいては,骨内支持を高めるためのデザインが鍵であり,側面のグルーブ付与は表面積の増加と骨の侵入による支持を期待できるとされているが,グルーブ付与に関する科学的根拠が明らかにされていない。そこで本研究では,まず,ニホンザル成猿4頭の両側下顎第一,第二小臼歯および第一大臼歯を抜去,3ヵ月の抜歯窩の治癒期間を設けた後,CT撮影を行うことにより,インプラント埋入予定部位の骨質の診断を行った。その後準備した無歯顎部にグルーブ深さの異なる2種類のシリンダー型インプラント(深さ0.15mmと0.35mmのグルーブ,0.25mmと0.45mmのグルーブの組み合わせで,それぞれの深さのグルーブ2個ずつが対角線上に配置されたもの)をどちらか1種類の深さのグルーブが頬舌側に向かうように方向を規定して片側に3本ずつ埋入し,3ヵ月経過後,2頭は屠殺し,非脱灰研磨標本を作製した。残る2頭に関しては,上部構造を装着し,さらに3ヵ月経過後に屠殺,同様の標本を作製し,組織学的ならびに組織形態計測学的に検討を加えた。その結果,グルーブの深さにより骨接触の様相が異なること,さらに,埋入部位の骨密度によっては,0.35mmグルーブでは骨接触率を,0.45mmのグルーブでは骨接触率および骨面積率を低下させることなどが明らかとなり,より高い骨支持を得られるシリンダー型インプラントのデザインを確立するための有益な知見を得ることができた。
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