研究概要 |
幼稚園に在籍する幼児が,日常生活場面で遊びや生活のできごとを他者と共に相互的・協同的に形成する過程において,造形的行為が認知的・社会的にどのような役割を果たすのかについて,以下の過程と視点により収集した参与的・周辺的観察事例の相互行為分析を通して明らかにした。 (a)できごとの協同形成過程における環境・事物・事象の相互的理解の成立。(b)できごとの相互的・協同的な形成過程における幼児の自他関係の変容。(c)できごとの協同的形成過程と社会的関係成立過程との相互的関係性。(d)できごとの生成過程を単位として認知的・社会的な発達的推移をつくる幼児の造形的行為の論理及び方法。 本研究を通じ以下のことが明らかになった。 (1)幼児が遊びや生活のできごと内でつくり表し使う道具や場の生成過程は,できごとの生成過程と相互的に生成されている。できごとと道具や場の生成過程は,幼児の行為に着目した生成的な関係単位「私-行為-道具」の連鎖として析出することが可能である。 (2)園生活になじみにくい園児における遊びのできごとの他者との協同的な成り立ちとその変容過程,できごとの成り立ちをつくる造形的表現の成り立ち,この2つの成り立ちを媒介にして成立していく他の幼児や保育者とのできごと内のアイデンティティ(社会的関係)の成り立ちの3者は,できごとの協同的形成過程において相互につくりあう関係にある。 (3)造形的に新たな<もの-意味>をつくり表していく過程は,「いま-ここ」で,他者との新たな関係を打ちたて、主体である<幼児-私>が新たに生きることを,表現行為のアクチュアルな遂行において成り立たせていく,自己の生成過程を意味する。
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