平均直径843±171μmの初期胞状卵胞をFSHを添加した培地中で、8日間培養を行うと平均直径は903±255μmに増加し、培養前におよそ90μmであった卵子の直径も124±3μmに増加していた。一方、初期胞状卵胞をFSHの添加なしに8日間培養した場合、卵胞直径は845±277μmから878±314μmとほとんど変化は見られなかったが、卵胞内卵子の直径は120±15μmに増加していた。しかし、この場合の卵子直径の増加は主に卵子の変性に起因していると考えられた。これら体外で培養した卵胞の組織学的検索を行った結果、培養前は卵胞内の顆粒層細胞に多く発現していたProliferating Cell Nuclear Antigen(PCNA)が8日間培養後では全く発現しておらず、細胞は死滅していく過程にあることが示唆された。また、卵子を覆う卵丘細胞層も薄くなり、FSHを添加しない場合は完全に裸化した卵子の割合が増える傾向にあった。これらの結果から、初期胞状卵胞を体外で培養する場合、FSHの添加が必要であろうこと、また、本実験の条件下では8日間の培養では長すぎることが示唆された。 そこで、培養期間を6日間に短縮し、同様の実験を行った。FSHを添加して培養を行った場合は、初期胞状卵胞の直径は770±189μmから827±214μm、FSH無添加の場合は、831±225μmから865±235μmへと変化した。また、採取される卵子の直径はそれぞれ106±11μmおよび107±7μmであった。FSH添加培養卵胞から採取された卵子は体内で発育した卵子に比べて卵丘細胞の付着量が少ないものの、FSH無添加で培養した卵胞由来卵子よりも付着量の多い傾向にあった。これら体外培養卵胞由来卵子の核相を調べた結果、FSHを添加して培養した卵胞由来卵子の方が卵核胞期にとどまっている割合が高い傾向にあった。
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