T2K実験は、加速器によって得られたミューオンニュートリノを用いて、電子ニュートリノ出現事象による振動パラメータθ13の測定、そしてミューオンニュートリノ消失事象による振動パラメータθ23、及び混合状態の質量二乗差Δm^2_23の精密測定を行っている。炭素標的から280mに設置された前置検出器及び295㎞離れた大型水チェレンコフ検出器(Super-K)にてニュートリノ事象数をはかり、両者を比べる事で振動パラメータの測定を行う。2013年5月までに測定したデータを用い、同年にθ13がゼロである事を7.3σの統計的有意性で棄却した事を発表した。さらに、同データを用いて世界最高精度でθ23を測定し、今年2014年にその結果を発表した。ニュートリノ振動で現在残されている課題としては、1.)レプトンセクターでCP保存が破れているのか、2.)質量階層性、3.)θ23は最大混合(45度)なのか、という主にこの3点が挙げられる。これらの課題を解決するためにも、反ミューオンニュートリノを用いたニュートリノ振動の測定は大変重要であると考えられている。私はこの反ミューオンニュートリノの生成量を検証するためにCT (Current monitor)を用意し炭素標的下流118mに設置準備を行った。このモニターにより反ニュートリノと共に生成された反ミューオンの量を測定が出来る事が期待され、その結果として、反ニュートリノの生成を確認する事ができる。現在T2K実験で測定されている振動パラメータの不定性の原因としてニュートリノ反応モデルの不定性によるものが大きい。この不定性は反ニュートリノの測定においても大きな影響を与えると考えられている。私はCTのR&Dと平行して、前置検出器に近い位置に設置した主に鉄及び炭素で構成された検出器「INGRID」を用い、未だ測られていないエネルギー領域におけるニュートリノ反応断面積の測定を行った。この解析による結果、測定値は現在のニュートリノ反応モデルと矛盾しない事が分かった。
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