研究課題
特別研究員奨励費
A. DNA修復においてはユビキチン経路が修復因子の集積、活性化の調節をする上で重要な役割を果たしている。本研究ではユビキチンE3リガーゼRNF8とRNF168について、互いの協調した働き及び独立した働きを明らかにした。1. 相同組換え修復におけるRNF8非依存的なRNF168の働きの解明相同組換えの初期過程においてRNF8, RNF168は協調して働いており、トリB細胞株DT40においてRNF8, RNF168の変異株はカンプトテシンやParp阻害剤に対してエピスタティックな感受性を示す(1年度目の報告)。しかし、Rad51のDNA損傷部位への集積動態から、RNF168と異なりRNF8はRad51ヌクレオフィラメントの形成には関与せず、その後の相同鎖探索の過程において相同組換えに働いている可能性が示唆された。2. 複製後修復におけるRNF168およびRNF8の働きの解明複製後修復機能の解析結果から、RNF8とRNF168が同じ基質に異なるトポロジーのユビキチン鎖を竸合的に付加し、基質の分解と集積を制御していることが示唆された(1年度目の報告)。基質を探索する目的で野生株及びRNF8変異株において複製ブロック部位に集積するタンパク質をMS解析で比較した。B. DT40細胞株の標的組換え効率が高い機構の解明DT40細胞は高頻度で標的組換えを行うことのできる唯一の高等生物細胞株である。しかし、その機構は分かっていない。本研究ではRNA-seqによりDT40細胞株とトリT細胞由来39CU細胞株、ヒトBおよびT細胞との転写プロファイルを比較することで、DT40細胞において標的組換えに寄与している因子を探索した。その結果DT40では、減数分裂時の組換え時に働く遺伝子群が高発現していることがわかり、これらがDT40の組換え機能に寄与している可能性が示唆された。
1: 当初の計画以上に進展している
交付申請時にはDNA損傷応答において相同組換え修復ではRNF8とRNF168が協調して働き、非末端結合修復ではRNFI68のみが関与していることが分かっていたが、本研究により新たに①相同組換えのRad51ヌクレオフィラメント形成はRNFI68のみが促進していること、②複製後修復経路において両者は競合して制御している可能性があること、が示された。以上のように、当初の計画では予想されていなかったRNF8とRNF168の独立した機能が明らかとなった。
上記①について、非相同末端結合修復経路を欠損させた変異株上でRNF8, RNF168を欠損させたRNF8/Ku70、RNFI68/Ku70細胞株は作成されている。これらの上に組換え後期において重要な働きを行うRad54を更に遺伝子破壊したRNF811 (u70/Rad54、RNFI68/Ku70! rad54変異株を作製、γ線照射に対する表現形を比較し、RNF8、RNF168、Rad54が同じ相同組換え経路で働いているのかを検証する。②について、複製後修復におけるRNF8、RNF168の基質を同定する目的で、HU処理後複製部位に集積するタンパク質について野生株とRNF8欠損株を比較し、解析中である。基質候補についてユビキチン化の有無、ユビキチン化されることの生物学的意義を検証する。
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Cancer Research
巻: 73 ページ: 4362-7
Cancer Res.
巻: (in press) 号: 14 ページ: 6917-6929
10.1158/0008-5472.can-12-3154