配分額 *注記 |
15,000千円 (直接経費: 15,000千円)
2003年度: 4,400千円 (直接経費: 4,400千円)
2002年度: 3,600千円 (直接経費: 3,600千円)
2001年度: 7,000千円 (直接経費: 7,000千円)
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研究概要 |
血管平滑筋細胞は収縮・弛緩により血管径を変化させるほか,コラーゲンなど細胞外基質を産生して壁を能動的に作り変えている.その収縮特性や物質産生は加えられる力学刺激に応じて変化し,例えば能動収縮を繰返すと収縮速度が上昇し,収縮状態で放置すると消費エネルギが減少するなど,アクチュエータとしても興味深い特徴を有する.そこで本研究では胸大動脈平滑筋細胞の力学特性,収縮特性を単一細胞レベルで詳細に調べ,力学的刺激との関連を明らかにすることを目的として,3年間に亙る研究を進めてきた.初年度には,正常血圧に比べてと高血圧のラット胸大動脈から得られた平滑筋細胞の弾性率が半分程度であること,次年度は正常家兎の血管平滑筋細胞は弛緩状態に比べて収縮状態ではその初期弾性率は10倍近く上昇していることなどを見出した.最終年度には細胞の力学特性に大きな影響を与えると予想されるアクチンフィラメントを染色し,その量と力学特性の関係を調べた.まず,正常血圧ラット胸大動脈より単離した直後の平滑筋細胞(FSMC)およびこれを継代培養した4〜9代目の細胞(CSMC)を対象とし,それぞれを細胞用引張試験機で引張試験して力学特性を求めた.また,ローダミン・ファロイジンでアクチンフィラメントの構成成分であるFアクチンを蛍光染色し,両者のフィラメント量の違いを調べた.初期弾性率は,FSMCで11kPa程度(n=8)であったのに対し,CSMCでは2.6kPa程度(n=10)であった.FSMCではFアクチンが細胞全体に強く染色され,個々のフィラメントは識別不可能であったのに対し,培養細胞ではストレスファイバーが明瞭に識別され,明らかにアクチンフィラメント量は低下していた.このようなアクチンフィラメント量の違いが力学特性に差をもたらしたものと考えられる.今後は,細胞骨格が単離平滑筋細胞の力学特性に与える影響を定量的に計測する必要がある.
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