研究概要 |
本研究は,研究代表者が提案した「粒界設計制御に基づく高性能材料開発」を,既にその有効性が実証されてきている構造材料から機能性材料への応用を目的として行われたものである.得られた結果の概要を以下に示す. 1.Niナノ結晶の異常粒成長に対する磁場の影響:磁場中焼鈍によりNiナノ結晶の異常粒成長が抑制され粒組織が均質化されることを見出した.また粒組織の均質化後には粒成長がほとんど起こらず,熱的安定性に優れることが明らかとなった. 2.粒界電気特性に及ぼす粒界性格・構造の影響:電子線誘起電流(EBIC)法およびケルビンプローブ顕微鏡(KFM)法により,予めOIM法により粒界の性格を決定した多結晶シリコンを用いて粒界の電気特性に及ぼす粒界性格・構造の影響を調査した.粒界における有効原子面密度が高いほど電気活性度が低いことが見出された.またKFM測定から,粒界のポテンシャル障壁の高さがランダム粒界では対応粒界よりも2倍程度高いことを初めて明らかにした. 3.多結晶シリコンのバルク電気伝導性に及ぼす粒界幾何学配置の影響:粒界幾何学配置の異なる試料における方向に依存した粒界微細組織を定量評価するために,方向性粒径(方向性粒界密度),方向性粒界性格分布を導入し,これらのパラメータが方向に依存した粒界微細組織を評価するのに有効であることを証明した。例えば,バルク電気伝導性は,方向性粒界密度および方向性ランダム粒界頻度が高くなるほど低下することを明らかにした. 4.鉄基アモルファス合金の磁場中結晶化による粒界微細組織制御:粒界微細組織制御による軟磁性材料の性能向上を目的に,鉄基アモルファス合金(Fe_<78>Si_9B_<13>)を磁場中結晶化させ,粒界微細組織形成に対する磁場作用の影響を調査した.磁場中結晶化によりシャープな{110}集合組織が形成され,軟磁気特性が向上することが明らかとなった.
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