研究概要 |
本研究は,研究代表者が1980年代に世界に先駆けて提案した「粒界設計制御に基づく高性能材料開発」を既にその有効性が実証されてきている構造材料から光電エネルギー変換材料および超磁歪アクチュエータ材料など機能性材料での粒界設計制御に発展させようとするものである.本年度は,磁気駆動型形状記憶合金として注目されているFe-Pd合金および優れた特性を発現しながら微細組織の熱的安定性に問題のあるニッケルナノ結晶材料に対象を絞り下記の研究を行った. (1)磁性形状記憶合金Fe-Pdの巨大磁歪発現に対する粒界微細組織の影響:急冷凝固・焼鈍法により粒界微細組織を制御した試料を用いて磁歪特性の測定を行った.マルテンサイト変態が関与する巨大磁歪の発現には,磁場印加直後に発生する通常磁歪を抑制し,内部ひずみを蓄積させることが重要であることが見出された.また,通常磁歪の発現を抑制するためには,Σ3対応粒界の存在頻度を低くすることが必要であることが明らかとなった.さらに,予ひずみを与えることにより巨大磁歪が増加することが見出された. (2)ニッケルナノ結晶の異常粒成長に対する磁場の影響:本研究者らのこれまでの研究により,磁場中焼鈍によりニッケルナノ結晶の異常粒成長が抑制され粒組織が均質化されることが見出されている.本研究では,示差走査熱量計(DSC)を用いて異常粒成長に対する磁場の影響を調査した.その結果,磁場の印加により異常粒成長の開始温度が高温側へシフトし,さらに異常粒成長に伴う発熱量も磁場の印加により減少することが明らかとなった.このことは,磁場の印加によりナノ結晶の熱的安定性が向上することを示している.また,発熱量の減少は,磁場の印加により粒界エネルギーが低下することを示唆している.
|