研究概要 |
本研究は,環境対応特性に関して比較優位性を示すルーラル電気ビークル(REV)を製作し,もってその環境保全効果に係る評価を行い,併せてこの新技術が生物生産圏に及ぼす波及効果を多面的角度から検討してREVの実用化に向けた考察を行うことを目的としている。得られた研究成果の概況は以下のようである。 1.試作した電気トラクタを改造して,PTO駆動機能を備えたREVを準備し,ロータリ駆動性能試験に供試した。Ni-MH蓄電池を搭載し,出力密度480W/kg,サイクル回数1400回の仕様をもつ蓄電池を用いた。システム総電圧は120Vとした。 2.ロータリ耕うん作業時,供試機と対象機であるディーゼルエンジン搭載トラクタの排気ガスでは,それぞれ,NO_xにおいて0.0017g/kmと0.70g/km, CO_2において140g/kmと430g/km程度の差が認められた。総合的に判断して,供試機の環境負荷低減効果は顕著であることが分かった。 3.1台の車両に積み込んで取り出せるエネルギー(つまり,有効利用可能エネルギー)は,供試機において約33310Whとなり,対象機と比べて14000Wh程度の優位性を示した。供試機の実用面での利点の存在が,けん引作業と同様に,ロータリ耕うんにおいても指摘できた。 4.実験設定条件下において,一充電処理可能面積は約0.25ha,作業能率は約0.6ha/hであった。これらの性能特性は,土壌条件に強く影響を受ける。 5.プラウ耕時の実験条件は,耕幅990mm,耕深160mm,所要電力22.3kW,作業速度3.8m/sとした。その結果,一充電処理可能面積は0.20haとなり,作業能率は0.45ha/h程度であることが分かった。 6.モノコック構造車体において,前方からの衝撃荷重は,ラーメン構造体の中間部に衝撃吸収空間を設けることにより,衝撃吸収エネルギーの増大を図ることができることを確認した。異なる構成部材の材質が,衝撃吸収エネルギーに及ぼす影響度合いについても定量的に調べ,材質選択のための基礎資料を得た。 7.振動を発生する構成部材との締結部分を柔結合あるいはダンパを介在させる方式とし,解析の結果,振動軽減効果についての具体策について有用な成果を得た。さらに,スポット溶接による結合と振動伝達率との関係についても検討した。
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