研究概要 |
1.耳石基質タンパク産生細胞の特定と、基質タンパクの微細分布:ニジマスの耳石の主要な基質タンパク二種(OMP-1およびOtolin-1)に対する特異抗体を作成し、光顕・電顕免疫組織化学をおこない、ニジマス内耳におけるOMP-1産生細胞は扁平上皮細胞と移行上皮細胞の一部、Otolin-1産生細胞は感覚上皮細胞に接する円筒形の背の高い細胞であることを明らかにした。さらに、OMP-1が耳石にのみに含まれるのに対し、Otolin-1は耳石と耳石膜ゼラチン層の両方に含まれることを明らかにした。また、耳石基質が厚いシート状の基質とその間の微細な網目状の基質の二種類からなること、網目状の基質の密度の濃淡により日周輸が形成されること、OMP-1,Otolin-1ともに微細な網目状基質内に分布すること、したがって両基質の産生・沈着量の日周変動により日周輸が形成される可能性があることを明らかにした。 2.耳石基質タンパク遺伝子発現定量系の開発:リアルタイムPCR法を用いて、ニジマスの個体ごとに両タンパク質のmRNA発現量を定量するための技術開発をおこない、ニジマス個体ごとのOMP-1,Otolin-1発現量の定量法を確立した。現在、本法を用いて量基質タンパク遺伝子の発現の日周変動を調べている。 3.内リンパ液の過飽和度の測定:耳石は内リンパ液から析出した炭酸カルシウム結晶である。一般に水溶液から結晶が析出する場合、結晶の形態や成長速度は、溶液の過飽和度(Sa)に大きく依存する。ニジマス内耳小嚢の内リンパ液の電解質濃度を個体ごとに実測し、内リンパ液のSaは2.027-4.303の範囲にあり、内リンパ液はアラゴナイトに対して過飽和状態にあることを明らかとした。さらに、Saは内リンパ液のpHと強い相関関係があり、内リンパ液のpH調節がアラゴナイト結晶の成長(=耳石成長)に非常に重要であることを示した。
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