研究概要 |
平成13,14年度は脊髄小脳変性症(spinocerebellar degeneration ; SCD)のうちで病変が小脳に限局する皮質小脳萎縮症(cortical cerebellar atrophy ; CCA)患者を対象とし,20チャンネル記録から作成したトポグラフィーをt mapとGlobal Field Power(GFP)を算出し検討した.この結果,小脳が高次脳機能処理を遂行する上で抑制的情報処理に関与していることを明らかにした(臨床神経生理学29:438-442,2001,Neuropsychobiology:巻数,頁数未定,2003).しかし,この検討は事象関連電位を応用したため,運動タスクがもたらす大脳機能賦活の重畳があったことは否めない.この点を明確にするために平成15年度は,運動タスクのかからない背景脳波(EEG),聴覚誘発中潜時反応(MLR)をCCA患者と正常者間で比較し検討した.従来の報告に準じ,Czから得られたそれぞれの成分の頂点潜時ならびに振幅を測定し,さらにGFPによる検討を行なった.以上の検討に加え,Low Resolution Electromagnetic Tomography(LORETA)にて,EEGおよびMLRについてCCAと正常者のそれぞれのボクセルごとにCCAと正常者とのt検定を行なった.また同時にMRIの定量的評価を行なった結果,CCA患者では正常者に比しBrodmann area 6での活動性が有意に低下していることを明らかにした(Clin Neurophysiol 114:740-747,2003).以上の研究は,小脳変性が基底核障害の存在なしに主に抑制系の高次脳機能障害を生じさせ,これには機能解剖学的にBrodmann area 6が関与することを明らかにしたといえる.
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